2019.12.23社員ブログ

他社より低い賛成率が公表されるのは

今年最後となるアイボンドブログをご覧いただきまして誠に有り難うございます。

2019年もあと一週間あまり。皆様にとって充実した年になりましたでしょうか。弊社では先週金曜日、株式上場後2回目となる株主総会がおこなわれました。年末の忙しいこの時期に、わざわざご来場いただいた株主様のお姿を拝見し、期待に応えられるよう、努力を重ねていかなければならいと、あらためて強く感じております。

近年、株主総会における議決権行使に注目が集まっておりますが、本日はそのなかでも、企業のガバナンスに重要な役割が期待される取締役の選任議案に焦点を絞ってのお話です。取締役選任議案の議決権行使にあたって、株主はどのような考え方で賛否を判断しているのでしょうか。取締役といっても、代表取締役、それ以外の社内取締役、社外取締役では求められる責任が異なるため、株主が区別して賛否を判断している可能性もあります。もし株主が明確な意図をもって取締役の選任議案へ反対行使をおこなっているとすれば、企業がそれを汲み取ることで、株主価値を向上させる施策を実施できるに違いありません。

大手信託銀行と有名私立大学に勤めている有識者らは共同で、取締役選任議案における議決権行使の決定要因について、幾つかの仮説を立てて実証分析をおこないました。業績が悪く、ガバナンスが確立していない企業に対して、株主は特に代表取締役の選任議案に反対表明しています。株主は業績が悪い企業の株式を売却することも可能です。しかし、売却せずに議決権行使で反対しているわけですから、これは業績やガバナンスの改善を企業に求めていることになります。

コーポレートガバナンス・コードの補充原則1-1①では、「相当数の反対票が投じられた会社提案議案について、原因の分析を行い、株主との対話その他の対応の要否について検討を行うべき」とされ、生命保険協会のアンケート調査(2018年)によると、54.2%の企業が反対の多かった議案の要因分析をおこないました。多くの企業が90%以上の賛成率を受け取っているなか、このアンケート結果は、企業が株主からの議案の反対行使を真摯に受け止めていることを示しています。これは、株主の議決権行使が企業の業績やガバナンスの改善に重要な影響を与える可能性を示唆していることのあらわれです。また、代表取締役にとって、取締役選任議案でたとえ否決されなかったとしても、他社より低い賛成率が公表されるのは耐え難いことなのかもしれません。低い賛成率は、取締役の交代可能性の高まり、労働市場における評価の低下による今後のキャリアへの不利益につながる可能性もあります。そのため、賛成比率の低い取締役が、企業の業績やガバナンスを改善しようと考えてもおかしくないでしょう。

株主が議決権行使により、明確な意図をもって企業に不満を表明することで、賛成率の低下した取締役が株主の不満に耳を傾け、企業の業績やガバナンスが改善されていくのであれば、積極 的な議決権行使は結果的に株主価値を高めていくことにつながります。弊社でも株主様のご意見を真摯に受け止め、その分析を十分におこない、株主様をはじめとするステークホルダーの皆様からより信頼される企業に成長できるよう、来年以降も努力を重ねて参ります。

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