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2カ月ほど前に発生した岩手県大船渡市の大規模な山林火災は記憶に新しいところですが、林野庁の統計によりますと、日本の山火事の7割は冬から春(1月~5月)にかけて発生し、そのうち半分は3月をピークに2〜4月の3カ月間に集中しています。冬から春にかけての時期、森林内に落ち葉が積もって燃えやすい状態になっていることや、風が強いこと、特に太平洋側の地域では乾燥した状態となる自然条件も重なり、火災が発生しやすいようです。湿度が低くなることで、火の広がりやすさも増します。また、春先には、行楽や山菜採りで山に入る人も増え、農作業や枯草焼きの火が飛び火することも原因のひとつです。風が強く乾燥したなかで火災が発生した場合には、火が拡大しやすくなり、一度広がると、大規模な火災になる可能性が高まります。山火事に限るものではありませんが、火の取り扱いには日頃から十分注意し、火災予防に取り組み、安全な生活を心がけていかなければなりません。
さて、日本は森林資源を利用してきた長い歴史のなかで、スギの優れた性質を見出し、人工林として造成して建築や生活道具に必要な木材を生産する仕組みを育んできました。また、第2次世界大戦後は、荒廃した国土の緑化や旺盛な木材需要への対応といった社会的要請に応え、スギなどの人工林を拡大させてきています。一方で、これらの人工林が成長するにつれ、スギ花粉などによるアレルギー疾患が顕在化し、国民を悩ませる社会問題となっていることはいうまでもありません。
スギ花粉の発生源対策としては、これまで花粉の少ない品種の開発・普及や植替えがすすめられてきましたが、一昨年4月、政府は「花粉症に関する関係閣僚会議」を設置し、花粉発生源対策を加速化させる道筋が示しています。現在、森林の有する地球環境保全機能や国土保全機能、木材生産機能などの多面的機能を高度に発揮させつつ、それらと調和した形で花粉発生源を減らしていく取り組みをすすめているところです。
有史以前の日本列島は、日本の固有種であるスギやヒノキの針葉樹が、気候に応じて落葉広葉樹のブナや常緑広葉樹のシイ・カシ類と様々な割合で混交し、広葉樹の葉や枝の層を針葉樹が突き抜けるような状態の森林によって広く覆われていたと考えられています。例えば、静岡県の登呂遺跡では建築物や道具類、田や畔を区画する矢板などにスギ材が使われていたとともに、周囲でスギやシラカシの埋没林が発見されたことからも、低地にも天然のスギ林が広く分布していたといえるでしょう。奈良時代に入ると、大規模な建築物の造営などにより、建築用材として優れた特性をもつスギやヒノキの針葉樹の伐採がすすんでいます。時代を追って大径の良材は減少し、伐採の範囲は畿内から次第に拡大していきました。第2次世界大戦の拡大に伴い、軍需物資として森林の伐採がすすみ、また、戦後も復興のために森林は大量に伐採されています。その結果、森林は大きく荒廃してしまい、大型台風などによる大規模な山地災害や水害が発生しました。国土保全の面からも早急な緑化の必要性が生じ、昭和20年代後半から昭和40年代にかけて集中的にスギなどの人工林が造成されています。
花粉は大気汚染物質ではありませんが、花粉症は史上最大の公害ともいわれ、パナソニックの試算によると、花粉症による労働力低下の経済損失は1日あたり2320億円にも及ぶとか。これが本当の公害であれば、事業の継続などあり得ないのですが、そうではないので、花粉症の季節が終わるまでは、弊社でも各人が対策を施し、日々の業務に支障をきたさないよう、努めて参ります。