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今週15日から来週20日までは、七十二候(しちじゅうにこう、1年を72に分けた暦)の竹笋生(たけのこしょうず)です。旬の味覚のたけのこが地面から顔をだす頃になります。たけのこ御飯の食材となる孟宗竹(もうそうちく・もうそうだけ)は3~5月が旬なので、春のイメージもありますが、暦の上では夏に入っており、たけのこは初夏の季語となります。また、孟宗竹は由来は、古代中国の三国時代、呉の政治家だった孟宗の、「たけのこが好きな母親のため、冬に竹林に入って孟宗が祈るとたけのこが生え、母親に食べさせることができた。」という親孝行逸話にちなんだもののようです。
5月も中旬となり、3月期決算である上場企業の2024年度の通期決算発表が相次いでいます。前年度の2023年度は株高などもあって、確定給付企業年金の運用状況が改善し、例えば、東証プライム上場企業の積み立て比率(将来の年金支払い額に対する積み立て済み資産の割合)は前年度比で10ポイント高まり、初めて9割を突破しました。100%超えも増え、全体の27%となっており、今年度の運用状況も注目されているところです。
ここで参考までに米国の状況に触れてみますと、2カ月近いストライキで2024年10~12月期に28億ドルの損失を計上した航空機大手ボーイング社では、大幅賃上げ、破格のボーナス増額など、労働組合の要求に次々と応えても、2014年に廃止した確定給付企業年金の復活については、最後までのむことはありませんでした。また、2023年に全米自動車労働組合が大手3社一斉ストライキで掲げた復活要求も退けられています。
株高などで米国企業における確定給付企業年金の積み立て状況は好転し、昨年末、大手企業の積み立て比率は100%に達しました。年金運営には追い風のはずですが、現実は、積み立て不足の穴埋めが不要になった今こそが好機と、確定給付企業年金の手じまいを急ぐ企業が増えています。米国では企業年金の新規加入がほぼすべて401Kなど確定拠出年金となった現在でも、資産残高の3割は確定給付企業年金です。従業員は確定給付の志向が強いため、強引に終了してしまえば、人材流出など悪影響を招くでしょう。
約束した給付は維持しつつ、延々と続く運用リスクや管理負担から逃れる方法として注目されているのが年金バイアウトです。主に英国や北米などの一部の国で実施されている確定給付企業年金の資産・債務リスクを削減する方策のひとつで、年金の資産と債務の全部または一部を保険会社などの第三者に移転するスキームを指します。通常、保険会社は退職給付債務にバイアウト・プレミアム(手数料など)を加えた金額で確定給付企業年金の資産と債務を引き受け、給付も保険会社です。年金コンサルタント会社のエーオン社によると、米国の年金バイアウトは10年前と比べて11倍以上に増えました。英国も積み立て比率の改善とともに年金バイアウトが膨らみ、今年は過去最高を更新する見通しです。企業は年金資産・負債が財務諸表から外れて身軽になり、年金を引き継ぐ保険会社は一括保険料が入ります。
さて、日本では議論はなされているものの、まだこの制度の法整備には至っていません。企業年金残高の8割を占める確定給付企業年金の状況は市場環境次第で急変し、積み立て不足になると、企業は投資を抑えてしまいます。本業と無関係な年金リスクを抱え続ければ、企業競争力にも響くでしょう。将来の危機がみえているにもかかわらず、実際に陥るまで放置するという悪癖から脱するときなのかもしれません。弊社で今後、企業年金を導入する機会があった際には、様々な側面から、検討をすすめて参ります。